先日にWOM勉強会に参加して肌で感じたが、いわゆる“クチコミ”を利用したマーケティングへの関心の高さは日を追うごとに強くなっているようだ。
私自身もこの1年半はリッチコンテンツを利用したバイラルマーケティングをテーマとし、いくつかの試みを行ってきた。こうしたクチコミが注目されるのもweb2.0という潮流がユーザーの動きを大きく変えたことに起因する。散々論じられてきたことではあるが、具体的な検証を行うことで見えてくることもあるかもしれない。以前より考えていた考察を纏めてみる。
今回取り上げたいのは表題にもあるとおり、グルメサイトのトラフィック。
グルメサイトは比較的予算の少ない広告主が大量に集まったロングテールモデルである。広告内容がひと並びで大きな予算が動く広告と違い人為的な仕掛けがない。それ故に自然発生したクチコミ恒常的に発生していると言える。
ユーザーは場所や金額等の条件にあった店舗を選べるという利便性を享受し、店舗はユーザーが情報を得ることで集客につながる広告効果を享受していた。それがCGMの台頭によって伝達のカタチを大きく変えていった。このことがサイトのトラフィックに与えた影響は少なくない。
ここではグルメサイトの老舗である“
ぐるなび”と新興の“
食べログ”を比較する。

上記のグラフを見ると“ぐるなび”のリーチが2006年の年末から下降し続けていることが分かる。
以前にも同様の比較を行い、“ぐるなび”のリーチが著しく低下していることは指摘していたが、その傾向は今も続いているようだ。逆に食べログは緩やかながらもリーチが上昇し続けている。
当時の考察ではCGMの成長で“クチコミ”や“評価”のない“ぐるなび”への利用者が下がっているという仮説を立てた。グラフを見ると仮説は概ね的を得ていたと思える。
しかし、そのテコ入れであるソーシャルネットワーク“
みんなのクチコミ”が始まった2006年9月からも傾向に大きな変化はない。直後に若干の上昇は見られるが年末需要が要因だと思われる。年明けにおいても下降は留まることを知らず、現在においては2005年と同様の水準にまで落ち込んでいる。“みんなのクチコミ”には評価機能がない為、思うような効果は得られないのではないかと予測していたものの、ここまで下降が継続するとは思わなかった。
この要因はどこにあるのだろうか?
“食べログ”は「みんなでつくる・・・」とあるとおり、コンテンツのほとんどがユーザーの投稿で構成されている。店舗のページに採点とクチコミを投稿し、更に自動的に個人のブログエントリーとして公開できる。また、店舗情報や自分が採点した評価がそのブログに引用できる仕掛けとなっている。グルメブログを作るのにこれほど適した状況はないだろう。秀逸なのはSNS的な情報の共有機能を持ちつつもオープンなブログ機能を持たせたことだろう。
一方、“ぐるなび”の方には相変わらず、採点の仕組みはない。レビューも“食べログ”のブログ機能に比べると見劣りするのか投稿数が伸びていないように見える。それを意識してか
ブログ機能を追加したようだ。
更に今月にはホットペッパーに遅れること約半年、APIの公開を行った。
一連のの流れを見ると“ぐるなび”はweb2.0呼ばれる潮流への対応が後手に回ったことは否めない。web2.0に対応することで広告主である店舗に評点をつけることになり、集客がマイナスに働くことも想定できてしまう。つまり、今までのビジネスモデルを大きく揺るがすことになりかねない。ホットペッパーが本格的にwebに参入し、競争が激しくなったことも要因として考えられるがCGMをうまく取り込めなかったことも無関係ではないだろう。
だが、これほどのトラフィック低下は少なからず、業績にダメージを与えている筈と思いきや、面白いことにそうはなっていない。最新の決算短信が興味深い。
http://www.gnavi.co.jp/company/ir/2007/070510.pdf利益率の低下は見られるものの、売上、加盟店供に増加している。BtoB向けのサービス開始や他事業の収益増加の影響もあるだろうが、トラフィック低下は直接的に営業活動に支障を与えているようには見えない。また全体のPVも増加している。これは携帯のPVも含めてのことだろう。
今のところ、web2.0がネット上のトラフィックを大きく変えたことが、グルメサイトにおいてはビジネスモデルを揺るがすほどのインパクトにはなっていないようだ。前述で“ぐるなび”の対応が後手に回っていると論じたがこれを見ると動向を見極めた慎重な対応であったと逆に評価できる。
だが長期的に見ればサイトの影響力の低下が収益低下に結びついていくことは間違いないだろう。そのためにAPI公開などの一連の施策を行ってきたわけだが功を奏してトラフィックの上昇に転ずることが出来るであろうか?
思うにAPIの公開はさほど効果をもたらすとは思えない。先にAPIを公開しているホットペッパーにも大きな効果が見受けられない。Amazon APIと違いアフィリエイトの収益がない為か、個人ユーザーに関して言えばAPIを利用するモチベーションが低いのではないだろうか?そもそもAPIを取り扱えるユーザーは限られている。
また、先行してブログサービスをしている“食べログ”に続いて“ぐるなび”もブログサービスを持つに至ったが、こちらの効果も疑問である。恐らく“食べログ”同様に店舗情報を引用できる機能が売りとなるのだろうが、それを自社サービス向けのみに提供していては、既に多く存在している外部のCGMを取り込むことが出来ない。緩やかになってきたとは言え、ブログ利用者は拡大が続いており、ポータルに集約するという考え方は既にナンセンスなのかも知れない。
http://www.videoi.co.jp/release/20070219.htmlhttp://www.wab.ne.jp/topics/cgm2007.htmlこのことは“食べログ”にもいえることだろう。
今後のトレンドとして敷居の高いAPIではなくブログパーツ的に気軽に引用が行えるサービスが出てくるのではないだろうか?
web2.0は商売にならないという声を良く聞くが、現状ではそのとおりと思う。ただし、潮流を見極め、既存ビジネスを促進させる効果をもたらすことは可能だ。グルメサイト内でおきているトラフィックの変化はビジネス上において大きなパラダイムシフトを起こすには至っていないが直接集客が売上に結びつくようなECサイトなどは顕著に現れていると思う。
先日のネットプライスの下方修正もこうしたweb2.0への対応の遅れが招いたのではないかと見ている。